自分は年齢を意識してないと言う人へ 私が年齢をNGにした理由

 






以前にもブログに書いたことなのだけど、ちょっとした進捗情報。不思議と年齢について考える機会が多かったので。というかずっと考えている。


年齢差別による現状を話す時に、真っ先に返ってくるのは、

「私は年齢で人を差別したりしないし、普段年齢を意識してないよ」という大雑把な回答。

問題なのはあなた自身の感覚ではなくて、社会的な構造。

それに加えて、社会的な構造があなたの意識を定義しているということ。


多くの人が「自分は普段、他人の年齢なんか意識していない」と答えるが、それがまず最初の典型的な差別構造だということ。

差別は通常は意識されていないものの中にあるから。

年齢に対して意識していないと思い込んでいること自体が問題なのかもしれないと思う。


私たちは普段生活していると、(それが差別かどうかとは関係なく)様々な構造的な年齢意識の中に生きている。スマートフォンの契約になぜ関係のない年齢を記入するのか、アルバイトの募集要項にはなぜ年齢制限が記されているのか、またメディアは超高齢化社会の只中で若者VS大人たちという対立を煽っているし、ニュースではすべての出演者の名前とともに年齢がテロップで映し出され、年齢を言い表す様々な豊かな日本語表現や流行り言葉(ゆとり、ブーマー、熟女、ロリコン、高齢出産、大器晩成、早熟、童貞、婚期などなど)を駆使して会話する。もちろんこれらが差別ということではない。

私たちはそういうものの真っ只中で生きている、ということが言いたい。


そこから脱却する、もしくはその中に潜んだ差別的状況を改善する、というためには、ただひたすらに年齢についての差別構造を積極的に意識し、知っていくことから始めなければならない。


だから「私は普段人の年齢を意識していない」ということは、端的に年齢差別に加担しているといって言いすぎじゃないと思う。いやこれは圧が強い言い方なので撤回。


LGBTQのデモやパレードが日本で紹介されたり、それら差別構造について問題視され始めた頃に常に言われていたのは、それらを「よく知る」ことが先決だということだ。

なぜなら性的マイノリティは長らく存在しないと思われていたか、もしくは存在したとしてもごく少ないものと思われていたか、もしくは単にごくごく稀な病気か障害だと考えられていたのだから。


私たちは長らく続いていた年功序列という社会組織のシステムから脱却しようとしている。以前では考えられないほどに平均寿命は長くなり、また一方で若者の自殺率が問題となっている。超高齢化社会への突入で出てきたスケープゴートは「老害」という新語ばかりではない。それはJKという架空のブランドであったり、ミス〇〇という名の品評会であったり、独特の絵文字使いで知られる〇〇おじさんであったり、また選挙の度に大々的に報じられる若者の投票率の低さであるのだ。

○○歳とは思えない若々しさ、といったタイトルの記事を目にするたびに、ぼくは気絶しそうになる。こういったトピックが当の本人と年齢の繋がりを強いものにし、特別な重圧感を与えていることに対して、失神しそうになる。


断っておくと、年齢という指標はとても大事だ。

様々な病気のリスクは年齢を基準にして考えることができるし、古き良き儒教的な「年上には敬意を持つ」という文化も素晴らしい。

でも、だからこそ悲劇を招くのだ。

たとえば、女性にとって年齢は、否応なしに結婚と出産というあまりにも大きなテーマと結びつけて考えられることになるから。

なぜなら確かに妊娠適齢期(大嫌いな言葉だ)を考えることによって出産時の母体のリスクを減らせるし、婚活(これも大嫌い)が少子化を少しでも抑えてくれるかもしれない。だけどもそれらはとても個人的な問題であって、他人からとやかく指摘されることではない。医者であればともかくとして。

男性は「そろそろ結婚だな」と言い、女性は自嘲気味に自分を「売れ残り」と卑下し、ワイドショーでは会ったこともない芸能人が薬指の指輪を披露する。


考えてみれば、結婚、出産、ついでに言うならセックス、というとてもパーソナルなプライベートな情報を、年齢によって他人から精査されるという異常な状況を私たちは甘んじて受け入れてきた。


しかし現実に目を向けると、

成人女性の3人に一人は堕胎の経験があるし、

結婚経験者の3人に一人は離婚の経験があるし、

妊娠経験のある女性の3人に一人は流産の経験があるし、

男性の5人に一人は生涯未婚で、女性の10人に一人は生涯未婚で、

女性の6人に一人は生涯出産経験がなく、

12人に一人は性的マイノリティーだと「自覚」しているし、

5人に一人は同性に魅力を感じた経験がある。


数の問題ではない。このようなグラデーションをぼくらは普段ついつい無視して、存在しないものとして扱っている。

だから、就職面接で書く履歴書に年齢を書くことにはNOと言わなければならない。

これはアメリカでは違法なことなのだから。


同じように、ぼくは、1人のアーティストとして、年齢を非公開にすることにした。

それに対して「アイドルじゃないんだから」と思うあなたはまだまだわかっていない。


ぼくは大学生の時に、「人に年齢をきかない」というルールを設けて、以来一度も人に年齢をきいていないのだけれど、

もうひとつルールを追加。

すなわち「自分の年齢もいわない」というルール。


なので、数人で談笑している時に、誰かがぼくの年齢を聞いてきたときに大抵の場合、変な空気になるのだ。


何歳ですか? と聞かれて、

知りません と答えるから。


変な空気にするつもりは毛頭ないし、それどころか、ぼくのこの対応が、まわりの人たちに対して不親切というか、嫌な対応だ、という自覚すらしている。

それでもなぜ年齢を人に言わないか。


なぜなら、現代の価値観は、年齢という目線を越えることができるし、そうするべきだと思うから。その方がハッピーだと思うから。

容姿や性別による侮蔑表現が、バラエティ番組で見る機会が少なくなってきたのは、単に受けないという理由だろうと思う。誰もそんなことで笑わなくなってきた。そういう空気感なんだろうと思う。

だけれど、そういったものの根元にある年齢という価値基準は、まだまだ置き去りにされているように思える。

だからってなぜそれをぼくが実践する気になったのかというと、正直よくわからない。単なる気まぐれかもしれないけど、ひとまずご報告。


ついでに、音楽活動をする上での他のNGルールも合わせて発表しておきます。以下お見知り置きを。

1、年齢

2、住んでる場所

3、交際関係


確かに上記は、かつてのアイドルのNGリストのように思える。超有名人でもなければ、お人形的イメージ先行型の古き良きアイドルでもないぼくが、このタイミングでこれらを決めたことには大して意味はない。しかしなぜかずっと自分の中で引っかかっていた事柄なので一度決めてしまった現在、なんというかせいせいしている、というか正直気持ちが良い。


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