JOURNAL170707


ぼくが出演しているFMラジオ『ご近所さんの気楽なステージ』
のレギュラーメンバーである野島さんが失踪してからもう3ヶ月。

昨日は、彼が問題の行動をしていた東武東上線の朝霞駅前に張り込みをした。
というのも、野島さんは、一時期は毎日のように朝霞駅で女性に声をかけていたからだ。
彼の目的は女性の体を触ることで、
時には聴覚障害者のふりをし、
時には視覚障害者のふりをし、
時には身体障害者のふりをし、
なんとしてでも自分に介助が必要なことをアピールした末に女性の体を少しでも触ってやろう、
というのが目的なのだ。
しかし彼はその実、知的障害者で、
それは決定的に隠せない事実。
彼はくだんの理由で警察に捕まったこともあるし、
2ヶ月ほど檻の中に閉じ込められたこともある。

ぼくは、改札から出てきた
若い(綺麗な)女性に片っ端から話しかけ、
「知的障害を持った背の高い男性に声をかけられたことはありませんか」
と質問した。

ぼくが声をかけると多くの女性は
てっきりナンパされるのかと思って無視するが、
「人探しをしている」
「知的障害だが聴覚障害のフリをしていて.......」
「ラジオのレギュラーなんですが初登場の翌週に失踪して」
などという意味不明な言葉をぼくがペラペラ喋るので、
なんだかよくわからないが詐欺にちがいない
と決めつけ、結局は恐れを露わにして逃げ去って言った。

確かにぼくは怪しかったにちがいない。
人の脳は、あまりにも入ってくる情報量が多すぎると、むしろ何も入ってこなくなる。

ぼくはラジオのメインパーソナリティである坂本さんの運営する
「コーヒータイム」というNPO法人の職員パーカーを羽織っていた。
ナンパではないことをアピールするために、坂本さんがぼくに貸してくれたのだ。
しかしこの格好がよけいに詐欺師のようなオーラを醸し出している。

途中、あまりにも無礼な態度でぼくを追い払おうとするギャル二人に、
ぼくは思わずかっとなって、
「人が失踪しとるんやぞ」
と吠えてしまった。
女性二人はそそくさと逃げたが、
交番にかけこまなかっただけマシだろう。

まあ別に交番にかけこまれたところで、何も悪いことはしていないわけだ。


とにかく、野島さんはよく失踪する。
それに関しては、母親以外の誰も心配していない。
坂本さんも、ぼくも心配していない。

きっと、関東のどこかの駅に今日も出没して、
なんとか女性に話しかけ、
なんとか少しでも体の一部を触ろうと模索しているのだろう。

いずれ誰かが警察にかけこんで捕まるのだ。

それよりも、彼をなんとかまたラジオに復帰させたい。

彼の様などうしようもない、世間から憎まれる様な障害者が、
このラジオには必要なのだ。

ところで、張り込みは1時間と少しで終了した。
目撃者の女性に出会ったからだ。
彼女は、野島さんに関していろいろ教えてくれた。
もちろん体を触られたらしいし、
聴覚障害者のフリをしていたらしい。

さて、彼女にも被害者側の意見として、
ラジオに出演してもらいたいのだが、
あまりにも唐突な申し出に彼女は困惑していた。

焦ることはない。
ゆっくり、ゆっくり。

JOURNAL170707 JOURNAL170707 Reviewed by asahi on 0:25 Rating: 5

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