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2012/06/08

こども喫煙クライシス


ぼくは最近、喘息の発作に悩まされていて、それでも喫煙の習慣をやめていない。何人かの方に「喫煙は控えた方がいいのでは?」というありがたい意見をいただいたが、それでも喫煙量は減っていない。
しかし、そういう事実を知ったところで、誰もぼくに文句はいわないだろう。余計に税金を払って買い、合法的にドラッグを楽しんでいるからだ。まあまともに働いてもないのに嗜好品だけは一丁前にしやがってと言われるかもしれないが、人間誰しもリラックスや逃避やセンス・オブ・ワンダーなものがないと生きてゆけないのだ。それが女遊びであったり、酒であったり、韓流スターであったり、カラオケであったり、ショッピングであったり、体に毒だろうが財布に毒だろうが、とにかく人にはゆとりがいる。

ぼくは高校生の頃から雑草やハーブを集めてパイプで吸ったりしていたが、それに関しても誰も文句は言わないだろう。未成年者喫煙禁止法には、喫煙とはすなわち煙草のことだとかいてあるからだ。法的に何もおかしくはない。

しかし、実をいうと、ぼくは、もしかしたら未成年者喫煙禁止法に反することをしていたのではないかと最近気がついた。というのは、ぼくは高校生といわず、可愛い赤ん坊のころから受動喫煙者だったからだ。それで未成年者喫煙禁止法について調べてみたのだが、この法律がなんとまあおかしいもので、急激に怒り心頭、危うく喘息の発作になりかねないほどの興奮を覚えたのだ。


未成年者喫煙禁止法には、以下のように明記してある。

第1条
満20歳未満の者の喫煙を禁止している。
第2条
満20歳未満の者が喫煙のために所持する煙草およびその器具について、行政処分としての没収のみが行われる。
第3条
未成年者の喫煙を知りつつも制止しなかった親権者やその代わりの監督者は、刑事罰である科料(1万円以下)に処せられる。
第4条
煙草又は器具の販売者は満20歳未満の者の喫煙の防止に資するために年齢の確認その他必要な措置を講ずるものとされている。努力義務という規定のされ方である。
第5条
満20歳未満の者が自分自身で喫煙することを知りながらたばこや器具を販売した者は、50万円以下の罰金に処せられる。
第6条
法人の代表者や営業者の代理人、使用人その他の従業者が、法人ないし営業者の業務に関して満20歳未満の者に煙草を販売した場合には、行為者とともに法人ないし営業者を前条と同様に罰する(両罰規定)。



この法律は簡単に言うと、「タバコを吸いたい未成年」のための法律である。タバコを自ら買い、おしゃれなジッポを手に入れ、ワックスで髪を無造作にし、シャツのボタンを開け、ピアスを開けた、そんな未成年者たちのための法律である。タバコは健康によろしくないらしいので、たとえ未成年者本人が「健康に悪いとは知ってるが、それでも吸いてえぜ!!」と思っているとしても未成年者には「判断能力が欠陥している」とみなされ、違法になってしまうのだ。「君たち未成年者にはポルノも喫煙も飲酒もだめさ。判断能力も責任能力もありゃしないのだから。ニコチンの過剰摂取で暴力的な人間になったらどうするんだね。ご近所の飼い犬を妊娠させちまったらどうやって責任とるんだい?」と、こういうことなのだろう。

ところで、彼らは「タバコを吸いたい未成年者」である。
一方で「喫煙する意思のない未成年者」もいる。
それが受動喫煙だ。受動喫煙は吸う意思がない人が半ば強制的にニコチンを摂取する状態だ。両親が喫煙者なら、子供は幼いころから副流煙の圏内で生活することになる。
なぜ未成年者の喫煙がだめか?
もちろん健康のためだろう。
火が危ないから?
だったらライターを規制すればいいだろう。「未成年者火気厳禁法」にすればいい。そうすれば全国の小学校で調理室は立ち入り禁止になり、線香花火は「大人のオモチャ」と呼ばれ、特撮ヒーローは消防隊員がモデルになるだろう。
ともかく、未成年者の喫煙は健康のために禁止されている。火のためなんかじゃない。
なのになぜ、受動喫煙が含まれない?

喫茶店入れば、タバコの煙が嫌な人は禁煙席に座ればいい。
しかし喫煙者の両親をもつ子供は、禁煙席を選ぶことはできない。赤ん坊だけ禁煙席にひとり座らせるわけにはいかない。両親と一緒に、喫煙席に座らせるのだ。この喫茶店の店員や両親、そして子供が、なぜ未成年者喫煙禁止法の違反にならないのだろう。この場合の子供は「タバコが体に悪いとか知ったことかね。一生の健康よりもぼくはひと時のリラックスを選ぶね。断然」と言ったわけではない。吸いたいとも吸いたくないとも判断していない状態なのだ。


ぼくはこの未成年者喫煙禁止法の意図が、目的が少しみえてきた。
この法律の目的は、「未成年者のニコチン摂取を防ぐ」ことではない。真の目的は、「未成年者の《ああ吸いてー》という意思を大人が阻害する」ということなのである。未成年者に決定権はなく、未成年者がニコチンを摂取するかどうかは「親の意思」に委ねられているのだ。

だって、「喫煙」という言葉がそもそもいい加減だ。「煙草」でも「ニコチン」でも「タール」でもない。嗅ぎタバコや受動喫煙やニコチンガムなどではない。巻かれたタバコを口に咥え、火をつけ、煙を吸い、そして吐きながらエスプレッソを一口、名刺を整理してそれから午後のプレゼンの準備をし、夜のキャバクラ接待について思案する、そういう「喫煙」のことなのだ。
ようするにだな、
「大人のマネをするな!!」
ということであり、
「ガキはおっぱい吸って寝んねしな!!」
であり、
タバコによる子供の健康被害など、もともとどうでもいいのだ。



おわかりかな?

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