チケット高額転売問題については、たくさんのアーティスト(とくにミュージシャン)が名乗りを上げている。
それで、数年前も、「私たちはチケット高額転売に反対します」というような声明のようなものを出していた。
そして、この度、ライブ・エンタテインメント議員連盟ができて、法改正に向けて動き出している。
議員連盟の総会によると、チケットが高額転売されることによって、また例のごとく文化が衰退するとかなんとか、そういう理由があるらしい。
総会に参加したサカナクションの山口一郎氏によると、高額転売されたせいで、ファンが3万もかけてチケットを購入するハメになり、しかもファンはそれを自慢するように山口氏に話すのだそうだ。
そこでKiishi Bros. Entertainmentは、全国のダフ屋のおじさんを、
KBE文化功労賞にノミネートすることを決定した。
KBEとしては異例の措置である。
KBE文化功労賞
主催:Kiishi Bros. Entertainment
ノミネート:全国のダフ屋のおじさん(またはおばさん)
ノミネート理由
「我が国の契約自由に則り商売し、かつ多くのファンを満足させてきたにもかかわらず不当に邪魔者扱いされようとしている」
我が国では、商品を転売することは自由である。
なのに、なぜかライブのチケットを高額転売することが問題なのらしい。
アーティストは、
チケットが高額転売されることにより、誰も買わなくなって
席ががらがらになっていたり、という経験があるらしい。
だから何?
世の中の商品とはすべてそうやって転売され、ある時は大成功したり、ある時は大失敗したりを
繰り返しながら巡っている。
たとえば、上のような例を引き合いに出して
「高額転売すると席ががらがらになる」
と考えるのはおかしい。
なぜなら、商品の値段は自然に需要に追いついてくるので、
昨年のライブで1万円で売って100枚のあまりがでたとしたら、
今年のライブは5000円で売って完売させようと思うからだ。
だから、逆を返せば、ライブ会場がガラガラだったというのは、
経験豊富なダフ屋が読みを間違えるほど、客側に買う気がなかったということなのだ。
そしてダフ屋は、売れなければ必ず値段を下げる。
それはライブ当日に会場の周辺まで、つまり開演ギリギリまで粘るのだ。
だから、席がガラガラだったというのは、あまりダフ屋の行為とは関係がない。
どちらにしてもそれほど客は来なかっただろう。
チケット高額転売が違法とされる根拠は、あまりない。
それが公共交通機関であれば、まだ話はわかる。
高額転売が問題となるのは、例えばまさに今沈没せんとすタイタニック号の中で、
救命ボートのチケットが高額転売されたとしたら、
これはなんと非倫理的なことだろう。
だけど、ライブエンタテインメントで、自由に転売されたりすることに何の問題があるだろう。
人気のトレーディングカードが高額で転売されたりすることに対して、
「ユーザーが公平にカードを入手する機会を妨げている」とは誰も思わないだろう。
太宰治の初版本が神保町の古本屋で高額で売られていたとしても、
「文学ファンが公平に本を入手する機会を妨げ、読書文化を衰退させる」とは思わないだろう。
ではなぜライブエンタテインメントはダメなんだ?
別にいいじゃない。
それに、運営側は、チケット高額転売によって直接的に金銭的な被害は全く受けていない。
そりゃそうだ。ダフ屋はチケットを購入して、転売しているのだから。
何も、盗んだものを売っているわけじゃない。
それに、ダフ屋は、ファンにとってはとても必要な機関なのだ。
だって、ぼくが本当に嵐のファンで、追っかけをやってて、すべての公演に必ず足を運ぶとして、
それでもチケットの抽選にもれたとしたら、
もうそれっきり。
どんだけアーティストへの愛があろうと、
もう絶対にライブには行けないのだ。
しかしダフ屋は、そうした緊急措置として存在していた。
金を出せば買えるのだ。
また逆に、ライブにいけなくなったときに売ることもできる。
今回のライブエンタテインメント議員連盟が主張しているように、
転売がもともとの価格以下でしか行ってはならないとしたら、
ダフ屋は存在する意味がなくなってしまう。
ライブにいけなくなった人が、誰かにチケットを売りたいとする。
でも、買いたい人がどこにいるかもわからないし、売買の作業自体が面倒だ。
そんなときに、ダフ屋はそれを代行してくれる。
しかしもともとの価格以下でしか転売ができないとしたら、ダフ屋の手数料は割に合わないかもしれない。
そのせいで「席がガラガラ」になるとは思わないだろうか?
結局、このダフ屋問題っていうのは、
日本の「努力したものだけが報われる」というしょうもない感情論にしか思わない。
「アーティストやスタッフが努力と時間をかさねて作り上げたものを、第三者が横からやってきて楽に稼ぐなんておかしい」
というわけだ。
確かに、アーティストやスタッフは、考え抜いた「これや!」っていう値段を設定しているのだから、
その値段でファンに買ってもらいたい、と思うだろう。
でも、それはあくまで理想で、
転売されたりすることって、契約に基づいて自由に行われるべきものだし、
何か公益に反しないかぎりは、とことん自由に行われるべきだと思う。
でも、アーティストは、
「ファンのみなさんのために」的な雰囲気で、というか、
正しい行いをしているマザー・テレサの気分で、
嬉しそうに「ダメ! 高額転売!」を叫ぶのだ。
何様のつもりだろうか。なぜただのアーティストが、ただのライブ公演が、市場をコントロールしようとするのか。
市場のコントロール。
「チケット三万で買いました!」と嬉しそうに語るファンに対して、
アーティストは、
「チッ」と舌打ちし、
「チケットは本来5千円だから、2万5千円分のグッズが売れたということか」
と思うわけだ。
でも、チケットの相対的価値は、ダフ屋との相乗効果で高まっていく。
もしダフ屋が介入せず、正当な5千円でそもそも売られていたとしたら、
このライブには「レア」度が低く、3万円のチケットを手に入れた時ほどの喜びはないだろう。
したがって、5千円でチケットを手に入れたとしても、
追加で2万5千円もグッズを買うとは思えない。
このライブエンタテインメント議員連盟、会長が石破茂でしょう。そして総会には室伏広治さんなんかが参加している。なぜ室伏広治??
結局ね、東京オリンピック。
オリンピックの会場周辺に、
汚らしい格好をしたダフ屋のおっさんにうろうろされては困るんでしょう。
景観条例のようなもの。