この頃はオタクが非常に多くて、大学のころも卒業後も職場でも、アニメや漫画の話は盛り上がることがあっても、小説の話で盛り上がることはあまりない。
なんとなく、漠然と考えていたのだが、オタクっていうものは、著作権についてゆるい認識なんだと思っていた。というのも、ニコニコ動画でみるMAD(動画を編集し直してつくる二次創作物)や、コミケなんかでみる漫画やアニメの二次創作物、ゲームから派生した様々な二次創作物である「東方シリーズ」、無記名の拠り所である掲示板「2ちゃんねる」、実在しないボーカルに曲を歌わせるという「ボーカロイド」、他人の曲に勝手に歌をのせる「歌ってみた」、自身が二次創作物になる「コスプレ」など、どう考えても著作権を無視したものや著作権を曖昧にさせるようなものばかり目立っていたからだ。そういう意味では、ぼくの「オタク」というイメージは、2ちゃんねるやニコニコ動画やコミケ的なものなんだろう。ネット文化とオタクは切り離すことができないと思うけど、実際、YouTubeやFacebookやGoogleはかなり著作権に反対な立場をとっている。テレビにせよ新聞にせよ、その媒体にはイデオロギーはかならずあるもので、Twitterなどのソーシャルメディアにおいては、情報共産主義的なイデオロギーがぷんぷんしている。そこがmixiと違うところで、mixiは情報を共有することを困難にさせる、むしろすごく排他的なグループをつくりだすものだった。もちろんニコニコ動画もなんらしかのものがあるんだろうけど、著作権について、なんとなく寛容な立場をとっているのが、ニコニコ動画や2ちゃんねるやコミケなどのオタク文化なんだろうと思っていた。
しかしそれは大きく違っていた。
それは、音楽を通して彼らと付き合うようになってから、少しずつ感じてきたのだ。コミケに参加する同人サークルに曲を頼まれたりするうちに、だんだんと彼らの気持ちがわかってきたような気がする。
ある同人サークルに対する「パクリ疑惑」のバッシングや、勝手にアップされたYouTube動画への削除申請、ある曲を商業で使う際の様々な制限など、そういうものを知っていった。
同人サークルの方々に「あなたはパクリで曲作ってるけどそれについてどう思う?」ときくと、あっさりとパクリは認め、「どうせたかだか同人サークルなんだから、やりたいことをやるべきだよ。たかが同人なんだから」とこたえる。
「たかが同人」というのは彼ら特有の自虐的な言い訳で、今まで本人たちがそう言ってきたのを何度も耳にした。
しかし、たかが同人で、好きなことをただやるだけというのは、著作権を侵害するという理由にはならない。好きなことをやるから法律を犯していいということはない。
それでいて彼らは、同人業界が商業に対抗できるだけのパワーがあることを自負している。パクリをバッシングし、YouTube削除申請をし、二枚組のベストアルバムを発売し、直筆サインをつけ、特典でポスターをつける彼らが、なぜ「たかが同人」などというまるで商業とは一線を画すかのような言い方ができるのだろう。彼らは商業の模倣に過ぎない。しかし自身は著作権を曖昧にし、無断で他人の著作物を利用し、違法ダウンロードをする。
オタクたちの著作権に対する考えは、消費者のエゴに過ぎないとぼくは思う。消費者としては著作権などない方がいい。無料で音楽を聞き放題で、それに歌をのせて発表できる。しかし一度自分の著作権が危うくなり始めた途端、オーソドックスな「アーティスト」に早変わりして、権利を主張する。この矛盾に気づいてぼくは、よほど愛想がつきてしまった。いや、もともと彼らに愛想などないけれども。つまり彼らは著作権について「とくに何も考えていない」か、「自分のことしか考えていない」のだろう。
先日、ニコニコ生放送で、社会民主党の福島みずほが登場し、視聴者にアンケートをとった。それは自民党の憲法草案で人権について「公共の福祉」が「公の秩序」と変えられていることをどう思うかというものだった。
結果は約50パーセントが賛成、約20パーセントが反対、約30パーセントがどちらでもない、というものだった。
やや右翼的な傾向はあっても、「表現の自由」がニコニコ動画の大前提であったのではないかと思う。それは2ちゃんねるにしても同じで、そのせいで元管理人のひろゆきは様々な訴訟を抱えることになった。しかし2ちゃんねるもニコニコ動画も、管理人の思想とは裏腹に、テレビとなんらかわりない「空気」に流されるものに成り果ててしまった。ぼくはあのニコニコ生放送で、こんなアンケート結果になったことに愕然とした。ニコニコ動画もマスメディアの、自民党の、空気的なイデオロギーの元で自由も何もないのだ。もちろんどんなツールにもイデオロギーはあるが、少なくともFacebookは今のニコニコ動画とは逆行しているはずだ。その思想が正しいとか正しくないは別にして、ただ、みな何も考えなくなってしまったんじゃないかと、絶望している。
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