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2017/09/05

JOURNAL170905




大阪にいる兄が「自分はサイコパスかもしれん」といってきた。
いわく、自分のせいで周りの人たちをたくさん傷つけ、家も、恋人も、仕事も、同時に失ってしまったらしい。

兄から電話でことの詳しい顛末を聞いているとき、ぼくは『ハムレット』を読んでいたのだが、
なんてシェイクスピア悲劇のような終わり方だろう、と思ったのだ。

とはいえ、兄がサイコパスかもしれんということは、ぼくはすでに1年前から気づいていたので、
電話で母に警告を出していた。
当時、ぼくから「兄がサイコパスかもしれん」と言われた母は、
「なんじゃそら」
という反応だったが、一年経った今、
母は電話でぼくに、
「みなみ(兄)から電話がきて、自分はサイコパスかもしれんっ言いよったよ」
というのだ。

兄は、日頃の行いを後悔し、
まわりの知り合い一人一人のところへ赴き、
自分が今までいかにバカだったかということを懺悔しに回っているらしい。

そんな太宰治的なサムい状況に陥り、
挙げ句の果てに床屋で生まれて初めて坊主頭にまでなった兄。

失恋して坊主頭にすることほど俗っぽいことはないし、
これに関してはがっかりなのだが、

優しいぼくは、そんな兄に

化粧を塗りたくって飾った娼婦の頬も
言葉で塗りたくってごまかしたわが行為ほどに
醜くはない。

という『ハムレット』の台詞をプレゼントした。

「ぼくのことが書かれてあるやんけ」
と兄はいったが、
ともかく、兄は心理的には大阪で「全てをうしなった」ような気分らしい。

ということで、兄が東京に移住してくる、というお話。


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