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2017/09/29

世界未来音楽会議の結果報告

2017年9月23日に「世界未来音楽会議」終了いたしました。
ケージ没後25年を冠する日本で唯一のイベントにして現代音楽とポップスを破壊する伝説的なイベント。



イベント終了後、出演者も含めて多くの人が興奮に包まれ、一つの空間で芸術的な爆発状態にいるようでした。
企画者であるぼくも、「これは伝説的なイベントになる」とは言っていたものの、それを実際に目の当たりにし体験し、ここにいた人たちが数年後に何らかの形でこの日を感慨深く振り返ることになるに違いないと確信した。






●現代音楽が大衆に戻ってきた!!

今回の企画のまず第一のコンセプトである、「cage out」という考え方、
これは、現代音楽が権威主義的な、アカデミックな、高尚な、真面目な、偉そうな、難解な、ものになってしまったことへ断固としてノーを突きつけるというものだった。
そして、現代音楽の若き巨匠である川島素晴先生と、謎のエレクトロニクス「木洩れ日エレキ」による、ジョン・ケージの同時演奏ぶっつづけの30分間。
爆笑に次ぐ爆笑であり、客席からは(関東圏のイベントにしては大変珍しく)ツッコミが自然と出てきたのである。
川島先生がステージ上でポテトチップスとカップラーメンを食べ始めた時には、ぼくも自然と「ただの一人暮らしやがな!」と声が出ていた。

演目
1 The Wonderful Widow of Eighteen Springs
2 Branches + Song Books + Solo For Piano
3 A Flower

注目は、10種類の植物を用いて指示通りに曲を展開していく大作「Branches」を木洩れ日エレキが演奏し、
同時に川島素晴が90曲以上ある歌集「Song Books」を演奏するという部分。
Branches+Song Booksの同時演奏はmacaroomと同じであるにもかかわらず、この様変わり、そしてやれば必ず客席から笑いと感嘆をとる腕前は流石の一言だ。




大爆笑大歓声のジョン・ケージ演奏、これを目撃できたことに誰もが感動していた。
その証拠に、木洩れ日エレキのDavid氏(壊滅的に日本語が喋れない)は、この日に「感動」という日本語を覚えたらしい。
「今日、覚えました、言葉、カンドウ」



●エレクトロニカ勢の猛襲
しかしながら、Jobanshi、ermhoi、macaroomというエレクトロニカ勢が「大衆性」と「難解さ」においてただ親指を咥えているわけではない。



Jobanshiはこの日のために88曲ものアンビエント作品を制作し、それを30分間で同時演奏するという驚異的な実験を淡々とこなしていた。ぼくはJobanshiの演奏に常日頃から「僧侶のような態度で音楽に取り組む人だ」と思っていたのでそれを告げると、彼は「思えばぼくはずっと修行をしているのかもしれない」と言っていた。そう、Jobanshiにとって演奏はエンターテインメントでも快楽でもなく、修行であったのだ。さて、客はその修行にただひたすらに耐えるのかというと、そうではなかった。フルイドアーティストのジョンと武術家の木石南が口を揃えて「Jobanshiのような音楽をやってみたい」と言ったのはライブ終了後まもなくだった。

またermhoiのライブも同様に、客席の反応が渦巻いていた。おそらく、こんな原石が下北沢の小さなライブハウスにいるなんて想像もしていなかった人たちだろう。ぼくは内心、今回のイベントですべてのアーティストにアンコールがかかるんじゃないかとヒヤヒヤしていた。いや、事実アンコールになりそうなギリギリの状態だったが、客席で全員がおそらく空気を読んで、大トリであるmacaroomまで我慢をしてくれたのだろう。そうでなけりゃ一晩でイベントが終わらなくなってしまう。



●そして、cage outへ
macaroomはエレクトロニカのユニットとして活動しつつ、「cage out」というジョン・ケージ演奏のアルバムを発売しているので、今回のイベントとしてはちょうど中間に位置するような存在だ。
しかし、ぼくは難解さを前面に押し出すことはしたくなく、ましてや川島素晴先生が現代音楽の最高峰で最先端といえるケージ解釈を見せつけてくれたので、むしろ安心してポップさに徹することができたのだ。
ジョン・ケージは素晴らしい。川島先生はあれほど狂った演奏で客席を大爆笑に包むのに、macaroomは全く同じ楽譜をもとにこれだけ幸せなポップサウンドでイベントを締めくくれるのだから。

セットリスト
1 mizuiro
2 homephone TE
3 yeah, we're low force
4 shinkiryu dropper
5 congress
6 Branches + Songbooks
7 ame
8 kingdom (アンコール)





 

macaroomによるBranchesとSong Booksの演奏は、お客さん(Twitter : Takeluxurylife)が撮影してくれているので拝借。ボブのシステムと木石南の武術、そしてmacaroomの演奏が初めて大集合で結実された瞬間であり、本当にジョン・ケージが没後25年を経てようやく自由になった(cage outした)瞬間だった。



企画イベント、レコ発ということで、なにげにグッズなど補強していました。
トートバッグは、emaruによるゆるゆるバージョンとぐちゃぐちゃバージョン、そしてぼくの絵によるバージョンと3種類も用意したが、すべて完売!








●ボブがシステムを語る
macaroomが今回用いた演奏システムに関しては、昨年のイベントと同様、ボブがツイッターで解説してくれているので、それを拝借。普段はあまりシステムのことをとやかく言ったり、ネタバラシはしないのだけど、こうした企画イベントでは逆に全部言っちゃうというのも恒例化しつつある








●展示作品が日本初であることはおかまいなしに



ジョン・ボッチによるフルイドアートの作品展示はイベント全体の士気を上げ、また会場の雰囲気をますます抽象度の高いものにしてくれた。ほとんどはフリップカップとよばれるスタイルでつくられているが、一部はスワールと呼ばれる、先月くらいにトレンドとなったばかりの作品まで展示されている、スワール流行後の作品展示はおそらく日本で最初のはずだろうし、貴重な展示であったことは間違いない。レコードの上に描いた作品はすべて2000円という超超激安で売るところもジョンらしい。



みんなで仲良く打ち上げました。
macaroomは次の企画へと大忙し。なんとついに3rdアルバムが発表されるとか。
左からジョン・ボッチ、木石南、アサヒ、emaru、ボブ



2017/09/15

JOURNAL170915




市役所の収税課を訪問。
市県民税、健康保険税などを払っていないことによる財産差し押さえを危機を迎えたからだ。
現在家がないことや、収入がほとんどないこと、音楽活動をしていることを告げる。
とりあえずぼくは確定申告をきちんとしていないので、それをするということになった。
そうすると非課税対象になり、なんとか財産差し押さえにはならないらしいが、
もろもろの審査など含めて1年くらいはかかるらしい。
なので、1年間は、そうした差し押さえの文章などが送られつづけるという。

ぼくの横には、おっちゃんが職員とやりあっている。
「納期はとっくに過ぎてるんですよ!」
「だかあら再来月に120万入るっていうのが確実なんだから、それで払えるっていっているでしょう」
「もうね、待てないんですよ」

その横には、丁寧に謝る中年男性。
「すみません、これはおれが悪いです。本当にすみません」
謝り続け、職員がなだめている。
その男性が帰ろうと席を立つと、足から腰にかけての違和感のある曲がり方。
身体障害者であった。
「あの、本当に、すみませんでした!」
めちゃくちゃあやまりながら彼は杖をついて帰っていった。

そしてぼく。
「あの、ぼく、家も財産もないんですけど、なにを没収されるんですか?」
「ううん、、、ええっと、、アイフォーンですかね」

そう、ぼくは、アイフォーンを没収されるという危機に面しているのだ。

話し合いを終えて帰る道すがら、
東南アジア系の女性に話しかけられる。
「ボランティア、ボランティア!」
見ると、アジアの子供達の写真をたくさん持っている。
「ああ、募金?」
ほとんど日本語は通じない。英語もダメだ。
「私は大学生です。毎日4時間ボランティアしてます」
「なんのための募金?」
「アジア! 全部!」
「アジアのどこの国への?」
「アジア! 全部!」
「あのね、ぼくは今、財産差し押さえの危機にあってね。差し押さえ、わかります?」
「焼きそばはわかります」
「いや、お金がない」
「わかります。バイバイね」

ぼくはやや罪悪感を覚えながら、一銭も寄付することなく去っていった。


2017/09/05

JOURNAL170905




大阪にいる兄が「自分はサイコパスかもしれん」といってきた。
いわく、自分のせいで周りの人たちをたくさん傷つけ、家も、恋人も、仕事も、同時に失ってしまったらしい。

兄から電話でことの詳しい顛末を聞いているとき、ぼくは『ハムレット』を読んでいたのだが、
なんてシェイクスピア悲劇のような終わり方だろう、と思ったのだ。

とはいえ、兄がサイコパスかもしれんということは、ぼくはすでに1年前から気づいていたので、
電話で母に警告を出していた。
当時、ぼくから「兄がサイコパスかもしれん」と言われた母は、
「なんじゃそら」
という反応だったが、一年経った今、
母は電話でぼくに、
「みなみ(兄)から電話がきて、自分はサイコパスかもしれんっ言いよったよ」
というのだ。

兄は、日頃の行いを後悔し、
まわりの知り合い一人一人のところへ赴き、
自分が今までいかにバカだったかということを懺悔しに回っているらしい。

そんな太宰治的なサムい状況に陥り、
挙げ句の果てに床屋で生まれて初めて坊主頭にまでなった兄。

失恋して坊主頭にすることほど俗っぽいことはないし、
これに関してはがっかりなのだが、

優しいぼくは、そんな兄に

化粧を塗りたくって飾った娼婦の頬も
言葉で塗りたくってごまかしたわが行為ほどに
醜くはない。

という『ハムレット』の台詞をプレゼントした。

「ぼくのことが書かれてあるやんけ」
と兄はいったが、
ともかく、兄は心理的には大阪で「全てをうしなった」ような気分らしい。

ということで、兄が東京に移住してくる、というお話。